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第2話 再婚話 03

last update Date de publication: 2026-02-28 06:00:10

「小倉は君の独身時代の財産に手を付けている。共有財産として使い込んでいるんだ。今日、財産分与なしで君に支払い能力がないからあちらの優位に立てるようには、そこを隠すためだ」

「そんな……使い込まれたから返せないんだ……でもそれ、証拠がないよ」

「だから、これから証拠を作る。今日君をここに呼んだのは、謝罪のためだけじゃない」

 財前君が私を真っ直ぐ見る。

「今の話を聞いて、考えて欲しい。俺を味方にするかどうか」

 味方――……この人が味方になってくれたら、これ以上に心強いことはないけれど……。

 でも、信用していいのかな。

 だって財前君は今日、私を追い詰めたのよ?

 けれど、それはかえって私のためになったと……財前君の言うことは一理ある。あのまま裁判がずるずる長引けば、もっとつらい目に遭っていただろう。お金もない私はみじめに法廷を去るしかできなかったと思う。

「味方って……どういうこと?」とりあえず提案内容を聞いてみようと思った。

「俺は小倉の代理人を降りる。もう関わらない。正確に言うと、弁護士として小倉のために動くのをやめる」

 財前君は続けた。

「ただし、俺が君の代理人として小倉と争うのは難しい。利害の問題がある。だから、別の弁護士を立てる。俺が優秀で容赦ないやつを紹介してつける。その費用は俺が出すよ」

「ほんとうにそんなことをしてくれるの……?」

「あと、君の生活を立て直す。安全な場所、資金、戦略。証拠の整理。最初から三浦さんを救えなかったから、罪滅ぼしをさせてほしい」

「そんなことまで……」

 その瞬間、個室のドアがノックされて静かに開いた。

 スタッフがコースの前菜を運んでくる。白い皿の上に、小さな宝石みたいな料理が置かれた。

 柑橘の香り。温かいパンの匂い。料理でさえこんなに美しいのに、私の見た目も心も、ぼろぼろすぎる。この場に不釣り合いすぎて泣きそうになった。

 スタッフが去り、また静けさが戻る。

 財前君が、ナイフとフォークに手を伸ばしながら言った。

「もうひとつ、君に提案があるんだ」

「……まだなにかあるの?」

 財前君は淡々と言った。

「俺と結婚してほしい」

 私は顔を上げた。

 目が合う。

 冗談の目じゃない。

「……は?」

 心臓が耳元で暴れるみたいにうるさい。

「なんで、そんな話になるの。なんで、結婚なんて……」

 私、今日、離婚したばかりなのに。

「君を守るためだ」

 財前君は言い切った。

「小倉は、もし君がこれから彼を訴えようと準備していることがわかったら、容赦なく攻撃してくるだろう。君を情緒不安定な女に仕立てて、社会的に潰そうとするような男だ。君ひとりで立ち向かえる相手とは思えない」

 私は震えた。

 悔しいけれど、財前君の言う通りになりそうな予感しかない。

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